大橋胃腸肛門外科医院訪問記:2002年12月24日

櫛部:なるほど。周囲の期待と自分の経験と
 の板挟みですね。

大橋:ええ、ちょうどその頃、大学の同期だ
 った友人と集まる機会があり「肛門科をや
 ってみてはと勧められている」と話すと、
 友人から「倉敷に肛門科の素晴らしい先生
 がいらっしゃるからそこで勉強してみては
 どうか」という話をもらったのです。そし
 て倉敷チクバ外科胃腸科肛門科病院で研修
 させて頂くことになりました。

櫛部:その病院はいかがでした?

大橋:当時、肛門・痔の手術に関しては真っ
 暗闇だったのです。その技術は秘伝、秘術
 といった感があり、まさにシュパイツアー
 博士がいた当時のアフリカ大陸のように、
 光がなく閉鎖的な状況でした。良いものは
 オープンにして皆が扱えるという体制でな
 いと医療は発達しません。結果、自己流の
 閉鎖的な医療によって患者さんは発達のな
 い治療を受けることになり、苦痛も伴い何
 かと不自由さがあったのです。そんな中で
 竹馬先生は近代的な技術と学問的な考えを
 学会などで発表しようという運動もされて
 おり、とにかくオープンな近代肛門外科を
 目指しておられ、そういった姿勢に私は非
 常に共感しました。そうして肛門科の勉強
 を続けるうちに、その魅力にとりつかれる
 ようになったのです。

櫛部:肛門に魅力を感じたから肛門科の開業
 になったのですね?

大橋:そう!お世話になった竹馬先生は考え
 方が非常にオープンで、素晴らしいアイデ
 アマンでもあり、先生の下で学んだことが現
 在も非常に生かされており感謝しています。

櫛部:医師の全体数からして肛門科の医師と
 いうのは少ないのでは?

大橋:外科を学んだ医師が肛門科をやるとい
 うのが一番理想的だと私は思うのですが、
 外科を学ぶ過程で肛門を学ぶ機会がないに
 等しいという状況があります。また「尻
 をやるなんて医師としてのプライドが許さ
 ない」(笑)というような風潮や、「尻医者」
 という言葉が示すように蔑まれたような雰
 囲気が伝統的にありましたから。

会長:開業からこれまでを振り返られていか
 がですか。

大橋:竹馬先生のところで基本を教えて頂き、
 その後は自分自身で応用してこれまでやっ
 てきました。現在では入院患者さんの100
 %、外来の患者さんの90%は痔に関連した
 方ですので、ほとんど専門医院と言えるで
 しょう。当院では近代的な技術を導入する
 ため最新の機器を積極的に使用してきまし
 たし、北四国全域を視野に入れた医療を展
 開しているということで、現在は自分自身、
 この仕事に誇りを持って取り組んでいます。
 これまで20年間、肛門科を手掛けてきて本
 当に良かったなと思っていますよ。



会長:手術の患者が多いと思いますが、手術
 時間はどのくらい掛かるものなのですか?

大橋:早い場合で5〜6分です。時間が樹かっ
 ても25分くらい。月・水・金の午後から5
 〜6件の手術があります。

会長:連日の手術だと、緊張感と共に体力的
 にもきついということはありませんか?

大橋:私は高校時代陸上をやっていまして、
 マラソンや駅伝が得意でしたから、今でも
 体力には自信を持っていますよ。

櫛部:診療上でのモットーは?

大橋:私が大切に考えているのは、良質な医
 療を提供することです。具体的には痛くな
 い手術で再発はほとんどしないこと、入院
 期間が短く仕事などに早く復帰できること、
 治療方法も改良を重ねより良い治療に取り
 組んできました。手術後の生活習慣で注意
 すべき点もご指導し再発の予防指導もして
 います。また、診療環境は美しく清潔を保
 つよう心掛けています。何しろお尻の世界
 ですから、患者さんに安心して頂けるよう
 にしなければね(笑)。

櫛部:毎日多忙な中、趣味やストレス解消法
 などは?

大橋:趣味というには語弊があるかも知れま
 せんが、禁煙運動(禁煙推進の会えひめ世
 話人代表)に取り組んでいます。また、ゴル
 フやインターネットなどの他、お能の謡い
 と仕舞を12年ほどやってます。これは年齢
 を重ねても楽しめることを趣味に持ちたい
 という気持ちで始めたのですが、とても落
 ち着きます。

櫛部:では最後に、今後の抱負や夢は?

大橋:医療に関して言えば、現在の方針を基
 にますます良い結果を出せるように努力を
 続けたいと思っています。又、個人的には、
 現在息子が勤務医の修行中なので10年間ほ
 どは色々な経験を積み自分に自信を付けて、
 将来は私の跡を継いでくれたら嬉しいです
 ね。

会長:今後も地域の皆様に信頼される医院と
 して、又、肛門科の地位向上のためのご活
 躍を期待しています。本日は、ご協力あり
 がとうございました。

 

 混合診療導入で
「医は仁術 医療は非営利」は死語になる
 大橋勝英
はじめに
 「医は仁術 医療は非営利」は医療界が久しく護ってきた崇高な理念であり、政治
・マスコミからも求められていた。ところがこの理念に疎い財界人による米国模倣の
市場原理主義論が内閣府に現れ、いつしかこの理念を政治から聞くことがなくなっ
た。米国にはこの理念はないのではないか。各紙も混合診療是認傾向にあり、財政優
先の巧みな世論操作を感じるものである。
 今年3月19日、2004年度から06年度までの規制改革の指針となる「規制改革・民間
開放推進3か年計画」、及び総合規制改革会議の後継組織、「規制改革・民間開放推
進会議」を内閣府に設置する政府案を閣議決定した。医療・教育・農業の企業への開
放をも目指し、国は財政負担の大きい分野から手を引くというのである。推進会議の
メンバーは当時、総理と金子担当相で調整され、医療の専門家は除外された。担当相
は「国民健康保険や介護保険、労災保険の民営化」を唱えていた。医療は営利・算術
に走ろうとし、国民にとって不幸な助走を感じるものである。
医療の市場原理
 市場原理下の米国の医療費は高騰を続けている。財界が言うような株式会社による
病院経営ではコストは決して下がらない。1998年の総医療費の対GDP比は日本は7.4% 
でOECD(経済協力開発機構)加盟国中18位と低く、市場原理の米国は12.9% 
(2002年は14.9%)で1位ということである。国民1人当たりのGDPは米国が4位、日本
は5位ということからすれば、日本の医療費は非常に少ない、安いということである
(公共事業費は日本を除いたG7各国の合計より多い)。
 ところが健康達成度の総合評価は米国は15位、日本は1位なのである。新薬の価格
上昇(EUの3倍、カナダの2倍)にある米国製薬工業界の申し入れの中には、日本の医
療費の総枠30兆円は非常に少ない、米国のおよそ半分である、米国並みにしなさい、 
60兆円という医療費にしてはどうか、医療費全体を大きくして公的保険外は民間保険
が受け持つ(混合診療の導入)、経済界に利益が生まれる、というものがあるとい
う。米国並みの医療費を使うべきだと提言しているという。100兆円市場とも言われ
だした。米国商工会議所日本支部からは株式会社による病院経営の要求が出ていると
いう。改革会議の医療における一連の動きは、医療で金儲けという外圧によるもので
ある。
17年度の予算編成
 政府は官から民へ、国から地方への徹底、民間需要の創出を言っている。官製市場 
下の医療、福祉、保育、教育を早期に大胆に民間開放にすべきとして、社会保障関係 
費の伸びの抑制、老人の増加に伴う医療費の自然増を放置しない、公的給付の抑制を 
図るとある(患者負担増)。この負担増に対しては民間保険の思い切った活用を図る 
(私的保険制度への転換)とあり、郵政の簡易保険開放要求と同じように内外の保険 
業界は待望しているのである。公的給付を下げるということは、相互扶助をやめ自己 
責任社会に向かわせるということである。
 具体的には、介護では自己負担率を1割から2〜3割へ、ホテルコスト・食費等を給 
付対象からはずす、保険者機能を強化、民間株式会社参入の促進(コスト高を生むだ 
ろう)などがある。医療では公的医療費の伸びの抑制を図る、公的保険がカバーする 
疾病、医薬品等の適応範囲の見直し、高齢者医療コストの縮減(入院医療費の包括払 
い化)、保険者機能の抜本的強化、並びに保険者と医療機関の直接契約の推進(非効 
率、コスト高、トラブル多発)などである。
混合診療(保険診療と保険外診療の併用)
 政府は医療費抑制策で病院の収益を低化させ、やむなく混合診療に向かわせようと 
しているが、混合診療は患者本位、患者のニーズ・選択肢という名目で、裕福な患者 
から公的保険外のお金を徴収する制度である。貧富の差で受診機会や医療の質が変わ 
る。国の公的守備範囲がさらに縮小されれれば一般国民が困るのである。4〜5割負担 
も首相筋で取り沙汰されている。
 規制改革・民間開放推進会議は、営利・配当目的の株式会社による病院経営への参 
加(高コスト化)と、その下地として必須となる混合診療の解禁を金科玉条としてい 
る。富裕層は質の高い医療にお金をかけると見込んでいるのである。尾辻厚労相は 
「個人的には混合診療に賛成」としている。坂口前大臣は問題あるとして反対してい 
たにもかかわからず、財界の後押しと首相のトップダウンで、年内答申・来年実施を 
目指し急速に進んでいる。混合診療を認めることによって、例えば国内での未承認薬 
でも、その分を自費ですれば公的保険分も含めて治療が受けられるが、負担費用は高 
額となる。国の未承認の薬に対して副作用等の安全性や有効性は誰が保証するのか。 
大臣は「どんなに高額であっても金に糸目をつけずにという思いを尊重したい」と言 
っているが、財政論(算術論)と一部の富裕層の為の導入では安易過ぎる。一般国民 
はどうなるのか。
 混合診療では公的保険に適応される最新の診断・治療・薬に対しても保険外とした 
り、もっともな理由付で拡大したり、高額負担に備えたい人が民間保険加入に傾斜す 
ることが連想される。しかし過去の病気、高血圧や高脂血症や糖尿病、肥満、その他 
保険会社が不利な持病のある人は入れない。治療内容について保険会社から病院への 
干渉も増えよう。加入条件の確認や治療内容の照合による事務上の煩雑さも問題とな 
ろう。官から民への流れの中で、国庫負担の減少と共に患者負担は益々増え、貧富の 
差で受診や治療内容の不平等が生じ、現行の国民皆保険制度は崩れていくだろう。
おわりに
 民間保険による支払い増や自費診療増で、一定水準以上の病院は利益を生むかもし 
れない。このため水面下で営利目的の株式会社による病院経営が検討されているので 
ある。医療費高騰の市場原理の米国には無保険者が四千数百万人もいる。医は仁術・ 
医療は非営利の理念を護り、相互扶助精神に基づいた、一般国民に有益な、現行の優 
れた公的保険制度を守らなければならない。
参考資料
1、平成16年度第6回規制改革・民間開放推進会議による年末の答申に向けた進め 
方及び基本方針における混合診療の骨子(10月12日、宮内議長提出資料、宮内氏はオ 
リックス生命会長)
 少なくとも「一定の水準以上の病院」においては、包括的に全ての技術等につい 
て、患者の選択に基づく当該病院の判断により「混合診療」を解禁する。
◇併せて、「一連の診療行為の中で行う予防的措置、保険適用回数等に制限がある検 
査」「患者の価値観により左右される診療行為」「診療行為に付帯するサービス」や 
「不妊治療」、「新しい検査法、薬、治療法」など、医療現場や患者のニーズが極め 
て高い分野の「混合診療」を解禁する。
2、米国でのこんな話
 医者「私の手術料は$7,000で手術室料などで$12,000かかりますよ。」、保険会 
社「$10,000迄しか出せません。」、医者「でしたら手術室を郊外の病院を借り、$ 
11,000にしましょう。」、保険会社「出せませんよ。」、医者「では手術料が低い医 
者に保険会社から患者に説明してやってください。」
 集中治療室の料金も1日で$1,000以上になるため、重症でも2〜3日で退出、1週間 
目には病院を退院し、病院前のホテル群(1泊$30)から身体に管をつけたまま通院 
(松山市医師会報第219号 平成13年)というように、保険の有無や経済力の差で治 
療が変わる。ブッシュ大統領は「医療を保険会社から我々の手に」と訴えている。市 
場原理で米国の医療は歪んでいる。
>署名のお願い
>大橋勝英
>
> 混合診療解禁反対の署名を急きょ11月に入って15日まで、下記ビラを添え患者さ
>ん他にお願いしました。12月が攻防の山場です。
>
>国民の皆さんへ
>混合診療をご存知ですか
>混合診療で医療は算術になります
>混合診療解禁に反対の署名をお願いします
>
> 混合診療といって一般国民にとって一段とお金のかかる政策が、来年早々にも解
>禁をと言っている首相の指示のもと、実施されるかもしれません。財界人の思惑に
>沿った経済財政諮問会議の提言は、医療への弱肉強食の市場原理の導入・株式会社
>による病院経営にねらいがあり、その下地として混合診療が必須なのです。メディ
>アは本質を理解できずに容認論を展開し、反対の医師会の情報を国民に伝えており
>ません。
> 同会議の混合診療論は、患者さんが望む保険診療外の特別な部分(診断・治療・ 
>新薬・サービス・予防)は自己負担してもらい、お金のない人はあらかじめ民間保
>険に入ってもらっておくというものです。国の給付を減らし(3割負担から4割〜5割
>の負担への道)、民間保険の活用を促進させると言っております(官から民への一
>里塚)。前行革担当大臣は国民健康保険、介護保険、労災保険の民営化を唱えてい
>ました。自己責任論がここにもあります。民間保険に入るにも高血圧や糖尿病や、 
>肥満、高脂血症、精神疾患、高齢者その他のハンディのある人は入れません(国民
>皆保険の崩壊)。保険外の値段は自由のため強い病院は自由に高く決めることにな
>ります。金持ちはそれに対応できますが、お金のない人は望む医療が受けられませ
>ん。尾辻厚労相は所信表明で混合診療に個人的には賛成と言いました。「金に糸目
>をつけない人の気持ちを大事にしたい」と。
> 同会議の議長はオ リックス生命の会長、宮内氏で、強引に混合診療解禁を主張し
>(会社発展)、米国薬品工業界や米国通商代表部も圧力をかけてきております。官
>から民への裏には弱肉強食の市場原理があるのです。公に民が利益を得ようとする
>ビジネスです。米国型の高価な医療世界になります。医は仁術・医療は非営利の日
>本の優れた公的保険制度を守り、充実するように運動しましょう。
--
////////////////////////////////////////////////////////
 大橋勝英@大橋胃腸肛門科外科
E-Mail : kaohashi@shikoku.ne.jp
URL:http://user.shikoku.ne.jp/kaohashi/
 混合診療導入で
「医は仁術 医療は非営利」は死語になる
 大橋勝英
はじめに
「医は仁術 医療は非営利」は医療界が久しく護ってきた崇高な理念であり、政治・マスコミからも求められていた。 ところがこの理念に疎い財界人による米国模倣の市場原理主義論が内閣府に現れ、いつしかこの理念を政治から聞くことがなくなった。 米国にはこの理念はないのではないか。各紙も混合診療是認傾向にあり、財政優先の巧みな世論操作を感じるものである。
 今年3月19日、2004年度から06年度までの規制改革の指針となる「規制改革・民間開放推進3か年計画」、及び総合規制改革会議の後継組織、「規制改革・民間開放推進会議」を内閣府に設置する政府案を閣議決定した。   医療・教育・農業の企業への開放をも目指し、国は財政負担の大きい分野から手を引くというのである。  推進会議のメンバーは当時、総理と金子担当相で調整され、医療の専門家は除外された。  担当相は「国民健康保険や介護保険、労災保険の民営化」を唱えていた。医療は営利・算術に走ろうとし、国民にとって不幸な助走を感じるものである。
医療の市場原理
 市場原理下の米国の医療費は高騰を続けている。   財界が言うような株式会社による病院経営ではコストは決して下がらない。  1998年の総医療費の対GDP比は日本は7.4% でOECD(経済協力開発機構)加盟国中18位と低く、市場原理の米国は12.9% (2002年は14.9%)で1位ということである。  国民1人当たりのGDPは米国が4位、日本は5位ということからすれば、日本の医療費は非常に少ない、安いということである(公共事業費は日本を除いたG7各国の合計より多い)。  ところが健康達成度の総合評価は米国は15位、日本は1位なのである。新薬の価格上昇(EUの3倍、カナダの2倍)にある米国製薬工業界の申し入れの中には、日本の医療費の総枠30兆円は非常に少ない、米国のおよそ半分である、米国並みにしなさい、60兆円という医療費にしてはどうか、医療費全体を大きくして公的保険外は民間保険が受け持つ(混合診療の導入)、経済界に利益が生まれる、というものがあるという。  米国並みの医療費を使うべきだと提言しているという。100兆円市場とも言われだした。  米国商工会議所日本支部からは株式会社による病院経営の要求が出ているという。  改革会議の医療における一連の動きは、医療で金儲けという外圧によるものである。
17年度の予算編成
 政府は官から民へ、国から地方への徹底、民間需要の創出を言っている。官製市場 下の医療、福祉、保育、教育を早期に大胆に民間開放にすべきとして、社会保障関係費の伸びの抑制、老人の増加に伴う医療費の自然増を放置しない、公的給付の抑制を図るとある(患者負担増)。 この負担増に対しては民間保険の思い切った活用を図る(私的保険制度への転換)とあり、郵政の簡易保険開放要求と同じように内外の保険業界は待望しているのである。
公的給付を下げるということは、相互扶助をやめ自己責任社会に向かわせるということである。 具体的には、介護では自己負担率を1割から2〜3割へ、ホテルコスト・食費等を給付対象からはずす、保険者機能を強化、民間株式会社参入の促進(コスト高を生むだ ろう)などがある。医療では公的医療費の伸びの抑制を図る、公的保険がカバーする 疾病、医薬品等の適応範囲の見直し、高齢者医療コストの縮減(入院医療費の包括払い化)、保険者機能の抜本的強化、並びに保険者と医療機関の直接契約の推進(非効率、コスト高、トラブル多発)などである。
混合診療(保険診療と保険外診療の併用)  
 政府は医療費抑制策で病院の収益を低化させ、やむなく混合診療に向かわせようと しているが、混合診療は患者本位、患者のニーズ・選択肢という名目で、裕福な患者から公的保険外のお金を徴収する制度である。貧富の差で受診機会や医療の質が変わる。国の公的守備範囲がさらに縮小されれれば一般国民が困るのである。4〜5割負担も首相筋で取り沙汰されている。 規制改革・民間開放推進会議は、営利・配当目的の株式会社による病院経営への参 加(高コスト化)と、その下地として必須となる混合診療の解禁を金科玉条としている。    富裕層は質の高い医療にお金をかけると見込んでいるのである。   尾辻厚労相は「個人的には混合診療に賛成」としている。坂口前大臣は問題あるとして反対していたにもかかわからず、財界の後押しと首相のトップダウンで、年内答申・来年実施を目指し急速に進んでいる。  混合診療を認めることによって、例えば国内での未承認薬でも、その分を自費ですれば公的保険分も含めて治療が受けられるが、負担費用は高額となる。 国の未承認の薬に対して副作用等の安全性や有効性は誰が保証するのか。 大臣は「どんなに高額であっても金に糸目をつけずにという思いを尊重したい」と言っているが、財政論(算術論)と一部の富裕層の為の導入では安易過ぎる。一般国民はどうなるのか。     
 混合診療では公的保険に適応される最新の診断・治療・薬に対しても保険外とした り、もっともな理由付で拡大したり、高額負担に備えたい人が民間保険加入に傾斜することが連想される。しかし過去の病気、高血圧や高脂血症や糖尿病、肥満、その他保険会社が不利な持病のある人は入れない。治療内容について保険会社から病院への干渉も増えよう。加入条件の確認や治療内容の照合による事務上の煩雑さも問題となろう。官から民への流れの中で、国庫負担の減少と共に患者負担は益々増え、貧富の差で受診や治療内容の不平等が生じ、現行の国民皆保険制度は崩れていくだろう。  
おわりに
 民間保険による支払い増や自費診療増で、一定水準以上の病院は利益を生むかもし れない。このため水面下で営利目的の株式会社による病院経営が検討されているのである。医療費高騰の市場原理の米国には無保険者が四千数百万人もいる。医は仁術・医療は非営利の理念を護り、相互扶助精神に基づいた、一般国民に有益な、現行の優れた公的保険制度を守らなければならない。  
参考資料
1、平成16年度第6回規制改革・民間開放推進会議による年末の答申に向けた進め 方及び基本方針における混合診療の骨子(10月12日、宮内議長提出資料、宮内氏はオ リックス生命会長) 少なくとも「一定の水準以上の病院」においては、包括的に全ての技術等について、患者の選択に基づく当該病院の判断により「混合診療」を解禁する。◇併せて、「一連の診療行為の中で行う予防的措置、保険適用回数等に制限がある検 査」「患者の価値観により左右される診療行為」「診療行為に付帯するサービス」や 「不妊治療」、「新しい検査法、薬、治療法」など、医療現場や患者のニーズが極め て高い分野の「混合診療」を解禁する。
2、米国でのこんな話
 医者「私の手術料は$7,000で手術室料などで$12,000かかりますよ。」、保険会社「$10,000迄しか出せません。」、医者「でしたら手術室を郊外の病院を借り、$ 11,000にしましょう。」、保険会社「出せませんよ。」、医者「では手術料が低い医者に保険会社から患者に説明してやってください。」 集中治療室の料金も1日で$1,000以上になるため、重症でも2〜3日で退出、1週間目には病院を退院し、病院前のホテル群(1泊$30)から身体に管をつけたまま通院(松山市医師会報第219号 平成13年)というように、保険の有無や経済力の差で治療が変わる。ブッシュ大統領は「医療を保険会社から我々の手に」と訴えている。市場原理で米国の医療は歪んでいる。